日本のリハビリテーション制度は、医療保険や介護保険を通じて提供され、病気やけが、老化によって機能低下した身体・精神の回復を支援する仕組みです。制度の枠組みは、患者の状態や段階に応じて提供されるサービスが異なり、大きく「医療保険制度」と「介護保険制度」の2つに分けられます。
1. 医療保険に基づくリハビリテーション
医療保険のリハビリは、疾患や障害を負った直後の急性期や、その後の回復期に行われます。主に病院や診療所で提供されるリハビリが含まれます。
- 急性期リハビリテーション:病気や外傷の直後から始まるもので、入院中の治療と並行して行います。身体機能を早期に回復させ、合併症を防ぐことを目標にします。
- 回復期リハビリテーション:急性期を過ぎ、病状が安定してきた段階で行われるリハビリです。日常生活の自立を目指し、専用の病院やリハビリ病棟で行われます。最大180日まで保険適用されることが一般的です。
- 維持期リハビリテーション:回復期を経ても完全には機能が戻らない場合や、慢性的な障害を抱える人向けに提供されます。通院や訪問リハビリなどの形で、機能の維持やさらなる回復を目指します。
2. 介護保険に基づくリハビリテーション
介護保険は、主に65歳以上の高齢者や40歳以上の特定疾病を持つ人を対象に提供されます。要介護状態になった高齢者が、可能な限り自立した生活を続けられるように支援するのが目的です。
- 訪問リハビリテーション:理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、生活環境に応じたリハビリを提供します。
- 通所リハビリテーション(デイケア):リハビリテーション施設やデイサービスセンターに通って、機能回復訓練を受けるサービスです。
- 短期入所療養介護(ショートステイ):短期間施設に入所し、リハビリや介護サービスを受けることができます。
3. リハビリテーションの種類
リハビリテーションは、以下のように対象に応じて専門的に提供されます。
- 理学療法(PT):運動機能の改善を目指すリハビリで、筋力トレーニングや歩行訓練などを行います。
- 作業療法(OT):日常生活動作(ADL)の改善を目指し、手先の動作や食事、入浴などの活動を支援します。
- 言語聴覚療法(ST):言語障害や嚥下障害を持つ患者に対して、言語の訓練や食べることの支援を行います。
4. 制度の課題
- リハビリの日数制限:医療保険のリハビリには、疾患ごとに提供できる期間が制限されており、それが十分ではないと感じるケースもあります。
- 介護保険の利用制限:要介護認定を受けないと介護保険のリハビリサービスは利用できないため、医療保険から介護保険への移行がスムーズにいかない場合もあります。
リハビリ制度は患者のニーズに応じた柔軟な対応が求められていますが、現状の制度にはまだ改善の余地もあります。